2017年8月10日木曜日

天才






 石原慎太郎の「天才」を読みました。田中角栄が語り口調で自らの人生を振り返る「独白」の形で書かれていて、とても読みやすかった。田中角栄というと、お金をばらまくような金権政治を作った、悪の権化のようなイメージがあるけれど、「政治は結局お金だ」という考えが生まれて来るプロセスがわかる…やっぱり、面倒見がいい人を、他の政治家も信頼するよね。

 でも、やっぱり日中国交正常化なんて、台湾を裏切るような真似をして、アメリカと対等になろうなんて、誤算だよなあ。周恩来は、その時から、日本人皆殺しを考えたっていう人もいるし、田中さん、調子に乗りすぎたなあ。相手は、数千万の自国民を虐殺しても意に介しない、腹黒い人間たちだって、わからなかったんだろうか。なんか、おめでたいな、って思いました。

 ロッキード事件は、そんなアメリカを出し抜こうとした田中さんへの報復だったって、思いますね。小説にあるように、全く身に覚えのないことだったと思うし、全く身に覚えのないことがピンチにつながることは、私も経験してよく知ってます。それが腹黒い策略…愛国者田中さんは、お金ですべてを解決しようとしたけれど、腹黒い人間のことはわからなかった。

 悲しいのは、秘書であり愛人であった佐藤昭の娘、敦子さんのリストカット、飛び降り自殺未遂…プライバシーにまで踏み込んでも、田中おろしを画策するメディアを前に、さすがの田中さんも、総理をやめる決意をします。正妻の奥さんの娘、真紀子さんともうまく行かない。家庭内はめちゃくちゃです。その中でも、子どもたちを守ろうとした田中さんは、偉いなあ。

 確かに、田中さんは、テレビというメディアを造った人、高速道路や新幹線で日本をつなげようとした人。各県に一つの飛行場を提案した人。この国のエネルギー資源のために、原子力を推進した人、って評価はあるけれど、田中角栄によって、日本の高度成長は終わったんだよね。石原さんは、田中さんのような人物の再来を求めているけれど、違うと思うなあ。

 日本の歴史の中で、一番優れた総理はだれかと言われれば、まだ就任中だけれど、安倍晋三だよね。保守派からすれば、リベラルすぎて物足りないって思うだろうけれど、一番バランスが取れている。お金をばらまいても、この日本はまとまらないよ。日中国交回復なんて、仲良くする相手を間違えていない? 天才と言われても、方法が間違っているなって気がしますねえ。

 そういうわけで、もっと天才なのは安倍晋三…けれども、この日本は、この国難に、安倍晋三に勝る天才を必要としている、って思いました。アメリカ軍の北朝鮮の爆撃が、今月中に始まるかもしれないって時に、田中角栄の再来じゃ無理でしょ。誰が危険がわかっていない。今の総理には、危機管理能力が極度に求められているんですよね。
 




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